"好き"と"関心"を巡る冒険 第二章 終幕 vol.1

(後編のあらすじ)
ハード側部署のセンターで、幹部社員たちに振り回されながらも、
3年間奮闘するが、色々あった結果、志半ばでセンターを出ることになる。

前回→"好き"と"関心"を巡る冒険 第二章 後編 vol.17 - Sato’s Diary
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2013年5月。
センターに戻ることを諦めた私は、
K部長の元を離れるため、
新人研修の講師の仕事と、センターの引継ぎ作業を行う傍ら、
社内求職活動を始めた。

新人研修の仕事は7月末までなので、7月上旬くらいまでに、
自分を引き抜いてくれるところを見つけられれば、
K部長の元からスムーズに離れられるだろう。

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ハード部署の中に、ビッグデータを扱っている部署があった。
ハードの仕事には興味はなかったが、
そこなら若干、私の興味と重なった。

「異動は異動先が引き受けてくれれば叶う」
という情報を知り合いの幹部社員から得ていた私は、
その部署にいる知り合いの社員から、
そこでやっていることや、人手が足りていないという情報などを得てから、
その部署の幹部社員の席に行った。

「すみません、今お時間いいですか?
 ちょっとこちらの仕事に興味があって、お話を伺いたいんですが」
にこっと笑って、声をかける。

そして、小一時間、話を聞かせてもらいつつ、
自分アピールもする。

5m離れたところに、普段は社外に出ていることが多い、
その部署の事業部長のK本さんが珍しく自席で仕事をしているのが見えた。

(私の声、聞こえてるかなー。聞こえてるよなー)

自分アピールしている姿を見られていることに恥ずかしさを感じつつも、
アグレッシブな社員が好きなK本さんには、
これもアピールポイントになるかと思い、
恥ずかしさを振り切って、自己アピールを続けた。

そうして、
「お話伺って興味持ったので、
 今度のジョブローテーション希望で、希望を出させてもらいます」
と言い添えて、その部署の幹部社員と別れた。


ちょうど、ジョブローテーション希望の提出時期だった。
これを使って異動するのが、一番、角が立たず穏便だ。
私はビッグデータの部署の名前と、異動希望理由を丁寧に記入して提出した。

人が必要だと言っていたし、
人ひとりくらいを受け入れる予算はありそうだったから、
希望が通る可能性は高いんじゃなかろうか。

組織編制の見直しが行われたり、
社員の異動が多く行われるのは1か月後の6月だ。

とりあえず、それまでの間、
研修講師の仕事をしつつ、
社内をふらふら歩き回ってES活動をしたり、
新人さんたちとの交流を深めたりしながら、
日々を過ごすことにした。

 * * *

6月中旬。

(そろそろ、ジョブローテーション希望の結果が出る頃かな)

そんなことを思っていた、ある日。
一通のメールが届いた。

『おひさしぶりです』
というタイトルのメールの差出人は、
昔、一緒に仕事をしていた、親会社に在籍しているT森さんからだった。

何年ぶりだろうか。

(何だろう…?)

首を傾げつつ、メールを開くと、

『おひさしぶりです。お元気ですか?
 今度、8月から長野の仕事が再び始まることになりました。
 当時の関係者を今、集めています。
 Satoさんの現在の状況は、どんな感じでしょうか?』

そう書かれてあった。

――・・・

2008年9月、長野。
「5年待ってください。5年で会社を変えるので」
お客さんのUさんに私は言った。

へべれけに酔っぱらった後の、ラーメン屋での出来事だった。
Uさんが覚えているかわからない。
そう思っていた。

今、
2013年6月。

『Satoさん、5年経つよ!
 もう一度、一緒にやろう!』

Uさんのそんな声が聞こえた気がしたーー。

(つづく)


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