寒い夜には

日に日に寒くなっていって、
寒い冬の夜というのは、なぜか、色々なことを鮮明に思い出す。


2年前の冬。
今、携わっているプロジェクトが開始して、
うちの会社の初期メンバー3人のうちの1人に私はいた。
まだ入社2年目のぺーぺーで、最初のお客さんとのミーティングでは
全く相手にしてもらえず、長野駅のトイレで一人泣いてた。
だけど次のミーティングで、なぜか認めてもらえて、そこから走り始めた。
雪の積もる長野に、何度となく通った。


1年前の冬。
プロジェクトの開発が佳境で。
狭いプロジェクトルームにわんさか人が集まって。
積み残された問題解決のためのミーティングと、
3人の後輩への作業指示と確認と、
自身の担当のプログラミングに追われて、
連日、終電やタクシー帰りだった。


怒鳴ったり、途方に暮れて泣いたり、
おかしくなりかけたけど、
でも、
初めて自分が中核として携わったプロジェクトだから、
無我夢中で走り続けた日々だったから、
幸せな終わりを迎えたいな、
て心から願っていた。


そんな日々は、つい3日くらい前のことに思えるのに、
いつの間にか、また、冬が巡る。


怒涛の日々を一緒に過ごした人たちのほとんどは、もういない。
開発の終息に伴って規模が縮小された、というのもあるけど。
上の方で色々な折り合いが付かなくなった、というのもある。


4ヶ月前に、開発の一番最初から一緒にやってきた総リーダー格の先輩が
プロジェクトから外れた。
私が金曜日に風邪か何かで会社を休んで、月曜に会社に行ってみたら、
そういうことになっていた。
それで、うちの会社では、私のいるチームだけがプロジェクトとして残った。


そして、私たちのチームの開発がひと段落する予定の来年の1月。
チームリーダーの先輩が会社を辞める。
薄々気づいていたし、人が辞めていくのはたくさん見てるから、
2日前、そのことを聞いたときは、そんなに驚かなかった。
先輩は自分のやるべきことをちゃんとやった上で行くのだし。


ただ、それからずっと、
ひどく、淋しい。


先輩が辞めてしまうということもだけど、
自分が大切にしていたこのプロジェクトが、
幸せな終わりを迎えられないままに、
そこから、さらさらと大切な人たちがこぼれ落ちていくことが。
そして、たぶん、私は最後の一人になるから、
これからも人がいなくなっていくのを、ただ見ていくのだということが。
残りは2人の後輩だけだけど。


上に対して怒ってみたり、
先輩たちに対して泣きついてみたりすれば、
少しは紛れるのかもしれないけれど、
そんなことしても、事態は何も変わらないしなぁ。


ただ、無力感と寂しさと暖かかった想い出が
ぐるぐるぐるぐるしていて、
なんか、よくわからないことになっている。