5/24(水) 4日目
「無理はしない」ルールにより、たまたま宿泊した常滑。
昔、お気に入りの常滑焼の急須を持っていたのだけれど、
アクシデントで割れてしまい、
「いつか常滑に行って、常滑焼の急須をまた買いたいなー。秋に常滑の焼き物祭りがあるみたいだから、その時に行ってみようかなー」
なんてことを思っていた。
焼き物祭りの時期ではないけれど、
せっかく常滑に来たのだから、
よし、常滑焼を見に行こう。
というわけで、常滑焼ロードへ。
焼き物の町というのは、
なんとなく、焼き物まつりの日以外は、
閑散としているイメージだったのだけど、
観光客やら、社会科見学の小学生やらで、結構賑わっている。
焼き物屋さんや窯の並ぶ、
急勾配の小道がうねうねと迷路のようになっている道のところどころに、
どことなく遊び心が感じられる。
土管坂とか、ネーミングセンスがツボすぎる。
焼き物屋に数件立ち寄るも、気に入る急須は見つけられず、
「今回は出会いはないかなー」
と思ったあたりで立ち寄った何軒目かの焼き物屋さん。
「お。かわいい。ここの焼き物、私好みだ」
急須以外もかわいいなー、
悩むなー、
と思いながら、焼き物たちを眺めていると、
奥の方から、
店主さんと先客が、日本語とフランス語が入り混じりながら会話しているのが聞こえてきた。
焼き物屋で、日本語とフランス語の会話。
どういうこっちゃ?
と耳をそばだてていると、
どうやら、先客は、
- フランス語の日本の観光ガイドブックを作っているフランス人(フランス語)
- 通訳のフランス人(フランス語+日本語)
で、
ガイドブックを作っている人が、これからここで焼き物作り体験をしようとしている模様。
日本を旅して回っていると、
「なんでこんなマイナーなところに外国人観光客が??」
と思うようなところで、外国人観光客を見かけることがよくあるのだけど、
なんと、フランス人が常滑のガイドブックを作りに来ているとは。
常滑来るの、日本人の私も初めてなのに。
「すみません、何か質問ありましたら、声かけてください」
焼き物を長々と眺めている私に、
店主さんが、焼き物体験のレクチャーをしつつ、声をかけてくれる。
そして、
「わからないことあったら、私が説明しますよ。店主さん、今、手を離せないので」
と、なぜかフランス人の通訳の方にも声をかけられる。
どゆこと??
頭に、はてなマークが浮かぶけれど、
それならお言葉に甘えて…、と、
「そもそも常滑焼って、どういうものなんですか?」
と、初心者な質問をしてみると、
常滑焼というのはですね…、
と、すらすらと答えてくれる。
「じゃあ、この焼き物はなんでこの色なんですか?」
と尋ねてみると、
それはですね…、
と、これまたすらすらと答えてくれる。
「私の説明、合ってますー?」
とフランス人の彼女が店主さんに確認すると、
店主さんが、焼き物体験のレクチャーをしつつ、おっけーと合図する。
常滑の町で、フランス人に常滑焼について教えてもらう日本人の私。
なんでそんなに詳しいんですか?
と聞いてみると、
彼女は愛知県の観光課のインバウンド旅行客担当とのことで、
色々と勉強したらしい。
なるほど、そういう採用枠があるのか。
政府がインバウンド、インバウンドと言っているのは何となく知っていたけど、
それによって、こういう雇用も生まれるんだなー、
面白いなー。
購入する急須を定めたので、
店主さんの手が空いたタイミングで、
お会計と宅配の手続きをお願いする。
(昔、ツーリングの帰り道で買った笠間焼をリュックに入れて持ち帰って、帰宅後に開封したら角がひび割れていた、という悲劇的経験から、焼き物は絶対に宅配するのです)
フランス人の通訳の彼女が、
日本語と常滑焼に詳しい理由はわかったけど、
店主さんがところどころで彼女たち相手にフランス語で話せていた理由がわからなかったので、聞いてみると、
「いつかフランスに行きたくて、語学学校に通ったんですよ」
とのこと。
語学学校にまで通うって、かなり本気ですね。
「家の後を継ぐことになって、行けず仕舞いなんですけどねー」
フランスに行きたい夢を抱く常滑焼の窯元さんと、
フランス人の観光客の案内で、窯元をたびたび訪れるフランス人のインバウンド担当者。
なんだか面白い繋がり。
「へー、バイクで旅してるんですね。いいですね! これからどちらへ?」
店主さんに尋ねられ、
とりあえず岐阜に行こうと考えているけれど、詳しいことは決めていない、
と答える。
今夜、大垣に泊まって、明日、揖斐川町に寄ろうと、
ぼんやり考えているけれど、その後が未定だ。
「じゃあ、今なら、グジョー八幡がおすすめです」
とフランス人の彼女が言い、
「あ、いいですね。グジョー八幡」
と店主さんがうなずく。
グジョー?
どういう字だ??
と思って、Googleマップで調べると、「郡上八幡」。
あぁ、この地名、グジョーって読むのか。
グンジョウとか、コオリガミとか読むのだと思っていた。
何で愛知だけじゃなく岐阜のことまで詳しいんですか?
とフランス人の彼女に尋ねると、
「実は私、こういうこともしてまして…」
と、郡上市の観光連盟の名刺をいただく。
さすが、わざわざ日本の地方都市にやって来て働くフランス人のエネルギーは、すごい。
というわけで、
常滑の町で、なぜかフランス人の方に勧められた郡上八幡を
行先の候補に加えて常滑を発ち、
この日は大垣にて宿泊。
(後編に続く)