楽しいツーリング旅のmyルール(後編)

5/24(水) 4日目 夜

常滑の町を発ち、名古屋近郊で渋滞にはまるも、
無事、大垣のホテルに到着。

ここまで来れば、間違いなく、
今回の旅のチェックポイントNo.2「揖斐川町に立ち寄る」をクリアできるな、
と思い、揖斐川町の知人に、
「明日、揖斐川町に行きまーす」
と、メッセージを送る。

ちなみに、知人には、ここまで全く連絡をしてない。
冬に会った時に、
「春にツーリングで揖斐川町に行きます」
と伝えたくらい。

  • 具体的な予定は立てない。その時の自分の気分に従う
  • 無理はしない

という今回の旅ルール。

本当に揖斐川町に行くのかどうか、
行くとしても、いつ辿り着けるのか、
ぎりぎりまで全く不明だったので、
確実に揖斐川町に行けることがわかった時点で連絡しようと考えていた。


最近の知人のSNSでの投稿からすると、
おそらく今は仕事が忙しそうなので、
たぶん、会うのは無理だろうなー、
まぁ、オススメの観光スポットだけ教えてもらおう、
と思いながら返信を待っていると、
「明日は予定があるんですが、明後日は無理ですよね?」
と返信が来た。

ふむ…、と地図を開いて考える。

明日、揖斐川町
明後日、常滑でオススメされた郡上八幡
という行程を考えていたけれど、
距離的に順番を逆にするのは可能だな。

「じゃあ、明日に郡上に行って、明後日、揖斐川に行きます!」
と返事を送り、明後日、揖斐川町で会えることになった。

予定をカチカチに決めていない旅だからこそ可能な調整。

5/25(木) 5日目

というわけで、朝、ホテルを発って、
郡上八幡に向かう。

気持ちよくモンキーを走らせていると、
「つみつみいちごカフェ」という看板の出た
ウッドデッキのオシャレなカフェが目に入る。

いちごかぁ、おいしそうだなー。
素敵な建物だなー。
まぁでも、まだ朝食を食べたばっかだからなー、
と思いながら、前を走りすぎようとしたところで、
ほぼ満席で賑わっている店内が見えた。

現在、平日の朝10時。

……え!?

のんびりした郊外で、
平日の朝10時に満席のカフェって、何者!?
思わず、200m通り過ぎたところでUターンしてカフェへ。


店内満席なので、テラス席へ案内されて、
「モーニングですか?」
と尋ねられる。

朝食はホテルのバイキングでしっかり食べてきたので、
「あ、スイーツの方で…」
と答える。

ちなみに翌日、知人から
岐阜の喫茶店では、超リーズナブルで内容盛りだくさんなモーニングが振舞われる文化があることを教えてもらい、
モーニングって言っておけば良かった!
と歯噛みする。

とはいえ、仮にモーニングを知っていたとしても、
充分にテンションの上がるパフェが運ばれてきた。

ミニいちごパフェ

気持ちの良い春の風を浴びながら、
平日の朝10時に、パフェ。
しあわせ。


そうして、幸せ補給を終えて、郡上八幡へ。
石段を、ぜーはーぜーはー昇って、
お城に到着。

郡上八幡

庭木とのコントラストが風情のあるお城。


社会科見学の中学生たちに交じりながら、
城内1階で郡上八幡の歴史展示を眺める。

郡上八幡の歴史は、まぁ地味っちゃ地味で、
中学生に、この地味な歴史はつまらないんじゃないかなー、
などと思いつつ、
(中学生たちは、展示物ほぼ素通りで上階の展望フロアに上がっていった)
でも、年を重ねると、こういう地味な歴史の方が嘘や脚色がなくて、
昔よりも多少面白さを感じたりもする。

ただ、説明書きがちょっとわかりづらいから、
私だったら地図や家系図を交えながら、
もっとわかりやすく書くかなー、などと余計なことも考える。


お城の最上階から景色を眺めた後、
城下町をぶらぶら歩いて、町家カフェで休憩しながら、
今日の宿をどうするか、と考える。

オシャレな町家カフェ

常滑郡上八幡をオススメしてくれたフランス人が
併せてオススメしてくれた宿のホームページを見てみると、
確かに良さげで、今日の空き部屋もある。
お。ここにするか。
と思ったところで、バイクを置く場所がないことに気付く。

町中に有料の駐車場はあるけれど、
宿から離れたところに置くと、いたずらされる危険があるからなー。

郡上八幡は城下町で建物が込み入っているので、
駐車場を併設している宿は少ない模様。
うーむ……。
しばらく検討した結果、美濃のゲストハウスを予約。

元来た道を戻りつつ、夕刻、美濃に到着。

美濃市の町並み

斎藤道三で有名な美濃。
どの辺にあるのかすら、これまで気にしたことなかったけれど、
こんなところだったのだね。

しかし、夏至のひと月前のこの時期は、
18時過ぎでもこんなに明るいのだな、とびっくりする。

会社勤めだった頃は、年に一度の長距離ツーリングは
いつも9月か10月頃が定例だったので、
日の時間を気にしたことはなかったのだけど、
明るい時間が長いと、その分、旅先をゆっくりぶらつけるので、なんだかお得な気分になるね。

5日目の行程

5/26(金) 6日目

そんなわけで、6日目。
今回の旅のチェックポイントNo.2の揖斐川町に向かう。

午前中は若干、雨が怪しい感じだったけれど、
雨雲レーダーとにらめっこしながら、
少し迂回して雨雲を避けつつ揖斐川町へ。

途中、霧雨に少しあたるくらいで、
無事、揖斐川町へ到着し、知人と会う。

知人は、創業130年の呉服屋の先代店主さん。
とても砕けた方で、たまにZoomで揖斐川町の話を
おもしろおかしく話すのを聞くうちに
揖斐川町に興味を持って、今回の旅の目的地にした経緯。

いつもネット越しに見聞きしていた、
歴史ある住居や、ご近所を案内してもらう。

「ここの神社の神主さん、先代はあまりやる気のない人だったのだけど、
 今の神主さんは、やり手でね」

昔から家族ぐるみの付き合いをしているという、
裏の神社を歩きながら、彼女が言う。

……やり手の神主さん。

何だ、それは。
神主さんにやる気とかやり手とか、そんなものあるのか??

首を傾げるも、彼女から語られる神社の裏話を聞いているうちに、
思わず爆笑しながら、
うん、それは確かにやり手だ、と納得。

いやー、神社も経営なんだね。
これから旅先で神社を見てまわる時には、
新たな視点が加わりそう。

揖斐川町は、準限界集落らしいのだけど、
そういう場所に愛着を持って暮らす人たちが、町を活気づかせようと知恵をめぐらせている話というのは、
とても面白くて、魅力的。
(でも、聞いた話の詳細は、
 ここに書いたら神社に怒られそうなので、秘密(笑))


美味しいお蕎麦屋さんで昼食を御馳走になってから、
午後は呉服屋の支店を案内してもらう。

素敵な反物たち

「せっかくだから、反物合わせましょうよ」
と言われ、
こんな着物のことを何もわかっていない人間が、いいんですか!?
と、変な汗をかきそうになりつつも、
いいの、いいの、と、色々合わせてくれる。

一枚の反物を巻いていくだけで、
正面から見たら着物を着ているように見える不思議。
すごいなー、着物って、本当に一枚の反物から出来上がっているんだなー。
しみじみ実感。
これ、外国の人とかが体験したら、Amazing!って驚愕されるんじゃなかろーか。

色々話を聞いたり、合わせてもらったりしていくうちに、
呉服の楽しみ方とか、
彼女が呉服を着ていく機会を作ろうとしていることの理由とか、
ほんの少し、わかった気がする。

「この柄が好きだけど、年齢的に似合わないと思うんですよねー」
と言っていた柄が一番似合った、というのも
不思議な驚き。
「和服って、そういうものなのよ」とのこと。

「うちの母はピンクが大好きで、ピンクの着物しか着ないのだけど、
 10年前に
 『私、10年後に何を着ればいいんだろう…』って途方に暮れたように言うから、
 『何を言ってるの。10年後もピンクを着てるに決まってるじゃない』
 って返したのよ。
 今朝見た通り、今もやっぱりピンクを着てるでしょ」



そんな感じに、
急に押し掛けたにもかかわらず、
至れり尽くせりにもてなしてもらって、
あっという間に夕方に。

本店に戻る道すがら、
「昨日、ここで蛍が数匹見れたから、今日も日が暮れたら見れると思うわ」
以前、私が「蛍を見てみたい」と言っていたことを覚えていてくれて、
田んぼと川と民家の並ぶ近所の通りを、
車で案内してくれる。

本店に戻って、夜は予定のあるという彼女と別れてから、
教えてもらった場所に再び一人で向かう。

人生で、まだ一度も蛍を見たことのない私は、
蛍の光がどういうものか、まったくわからない。

何か光ってる気がする…あれか…?

と思って、じっと目を凝らしてみるも、
それは外灯に照らされた水滴だった。

「蛍?まだちょっと時期が早いんじゃないかしらねー」
「○○の方に行ってみたら、もしかしたらもう出てるかも」
「出るとしたら、もうちょっと暗くなってからだねー」
カメラを構えてうろちょろしながら、川辺に目を凝らしている私に、
散歩の人達が親切に声をかけてくれる。
(単に怪しまれていただけかもしれない)


そうして、日もとっぷり暮れた19時半。

ふぉん…ふぉん…
という感じに、明滅する光が一点。

…お?

と思って目を凝らすと、
呼応するように、近くで別の明かりが、瞬く。
ひとつ、ふたつ…と、明かりが増えていく。

おぉぉぉ!蛍だぁぁぁ!

一人、歓声を挙げる。

人生初の蛍の光

蛍の光って、こういうものなんだなー。
蛍光灯の明かりと近い色なんだなー。

少しずつ光が増えていって、
たぶん、最終的に10匹ほどの蛍の光を、この夜見れた。

残念ながら、私のへっぽこな腕前では、
蛍の光をカメラに収めることはできなかったので、
瞳というレンズにしっかり焼き付けました。

心眼をもってすれば蛍の光が見えるかもしれない

  

6日目の行程

(〆めに続く)