10x5

TVを見ない生活なので、今回の台風の被害状況をよくわかっていなかったのだけど、
ネットニュース見たら、結構大変なことになってますね…。
被災された方、お見舞い申し上げます…。

その中で、この記事いいのかなぁ…とちょっと悩んだのだけど、
一生一度のことの話なので、upすることにします。



家族と、いくらかの知人は知っていることだけど、
私には、20年くらい前から、特別に好きなアーティストが一人います。

自分と同年代の彼女の歌や生き様に惹かれて、影響も受けて、
頑張ったり、挫折したり、立ち直ったり。
時折、彼女のインタビュー記事を読んで、
お互い、大人になったねぇ、なんて思ったり。
何と言うか、一緒に年を食ってきたような感じも勝手にある。

そんな彼女が、最近、10枚目のアルバムを出しました。
(ベスト盤とかがちょこちょこ出ていたので、
 あれ、まだ10枚目?という感じではあるのだけど)

そしてその記念ということで、
『10月10日10名限定プレミアム招待ライブ』
というものが企画されました。
10枚目のアルバムを購入した人の中から抽選で選ばれた10名を
プレミアムライブに招待して、
これまでの10枚の各アルバムの中から1曲ずつ、計10曲を演奏する、
という、10づくしのプレミアムイベント。


さて。
私の家族は、とにかくクジ運が悪いです。


ハズレクジの確率の方が低いような抽選でも、ばっちりハズレを引き当てます。
その家族の中では、一番、クジ運が良いとされている私ですが、
それでも、「抽選に外れた方の中から1000名様に!」みたいなものに
ようやく当たる感じ。

なので、もちろん、アルバムは購入して、
プレミアムイベントへの申し込みはしたけれど、
なんていうかそれは、ファンとしての礼儀というか、
神社に行ったら願い事なくてもお賽銭するのと同じような感覚で、
全く期待もしなければ、願掛けもしなかった。

当選発表の日、昼くらいにメールチェックした時には、
特に結果発表のメールは来ておらず、
「そういえば、ハズレは連絡来るんだっけ?どうだっけ?」
と思い、そのあと、特に気に留めなかった。

夜、会社を出てから、うどん屋に入って注文した後に、
タブレット開いて、未読メールの一覧を確認。
見慣れたDMメールや、ニュースメールに混じって、
『当選のご案内になります』
というタイトルのメール。

ん?
あぁ、結果発表のメールね。
これ、『当選結果のご案内』が文言として正解だよね、
『当選のご案内』じゃ、当たったことになっちゃうよ。

そう思いながら、メールを開いて、
『このたびは残念ながら・・・』な、お決まりの文言を予想して、
流し読みモードで、メール文面の真ん中あたりに目を通す。

ん?
なんか、日時とか場所とかが書いてある・・・?
・・・え?
改めて、メールの文面を冒頭からきちんと読んでみると、
『厳選なる抽選の結果、当選されました』
と書いてある。

・・・・え? もしかして、定員割れ??

まず、そう思った。

今回の企画は、
10月2日  アルバム発売
10月6日  抽選申し込み期限
10月7日  結果発表
10月10日  プレミアム招待ライブ
という、結構カツカツな感じだったので、
もしかして、抽選に間に合わなかった人とか、
予定を確保できなかった人とかが多くて、
応募者が10名に満たなかったのだろうか・・・?

いやいや、平日の夜の武道館のライブが観客いっぱいになるのだから、
スケジュールがどんなに急だとしても、いくら何でも、
応募者が10名下ることはないだろう。

・・・ということは、システム障害か担当者の操作ミスで
応募者全員に当選メールが流れてしまった?

次に、そう思った。

でもこのメールが発信されてから3時間経過しているから、
もしそういう事態だったら、訂正メールが既に送られてきて良さそうだよな。。。

Twitterを見てみると、
当たらなかった、と肩を落とすつぶやきが流れている。
・・・え? これ、本当に当選メールってこと・・・?

どうにも、実感を持てず、目を点にしながら、
つぶやく。

f:id:satoko_szk:20191013193454j:plain

何かの間違いな気がして、誰のライブかは、つぶやけなかった。

メールには、出欠の返信を求める記載があったので、帰宅してから、
「もちろん出席します。まだ信じられないですが」
と返信。
翌日になったら、
『すみません、誤って当選メールを送ってしまいました』
みたいなメールが来るんじゃなかろうか、と8割くらい思っていたけど、
代わりに、
『お待ちしております』
のメールが届いた。

いよいよもって、本当のことらしい・・・。

次に湧き上がってきたのが、
私でいいんだろうか・・・?
という思いだった。

たぶん、当選したい、と真剣に願掛けしていた人は他にいっぱいいただろうし、
私の中で、彼女が唯一無二のアーティストなことは間違いないけれど、
彼女のファンをずらーっと横に並べたときに、彼女に対する想いの強さが
上位10位に入っている自信はない。

もちろん、当選権は譲渡禁止だし、
仮に譲渡可能で譲ってくれと大金を積まれたって、絶対に譲らないけど。
愛の形は人それぞれだし、順列じゃないよね・・・?

そんなことをライブ当日まで、ぐるぐる考えてた。
7日に発表して、10日にライブ、というスケジュールは、
この落ち着かない時間を短くする意図もあったのかもしれない。

当日。
普通に出社して、打合せ。
「来週は私、会社いないですよ、ツーリング行くんでー」
「へぇ、今回はどこ行くの?」
と、まったくライブと関係ない雑談。
今回の当選のことは、誰にも口に出して言っていなかった。
そもそも、会社の同僚に好きなアーティストの話をしたことがなかったのもあるけど、
なんだか、口に出したら、消えてしまいそうな気がして
怖くて言えなかったのが大きい。

夕方。
万が一、電車が遅れたことも想定して、集合の1時間前に到着可能な時間に、
いそいそと、早めに会社を退出。
電車は特に遅れることなく、早めに会場近くまで行けた。
集合が19時半、ライブが20時から21時までなので、
会場そばのカレー屋で軽い夕飯。

食べ終えて、集合10分前に集合場所に到着すると、既に5人が揃っていた。
全員緊張した面持ちで、何となく張り詰めた空気。
開催場所が秘密のライブなので、「○○のライブですよね?」と聞くことは憚られ、
無言の集団に自分も加わる。

大きな花束を抱えている女性を見て、
(そうだよ!花束だよ!!なんで自分、気づかなかったんだ・・・!!
 カレー食べてる場合じゃなかった・・・)
と、ずんと落ち込む。

無言の集団に、ひとり、ふたりと加わり、
ちょうど10人揃った定刻、スタッフの方が来て、中に案内してくれた。

当選メールと、申し込みのシリアルコードの記載された応募要領と身分証明書を
確認してもらい、ロビー的な場所のソファ席にて待つ。
(自分の確認の時間が少し長い気がして、
 「あれ・・・?番号違う・・・?」みたいなことに
 なるんじゃないかと、どきどきしたけど、大丈夫だった)

トイレに行かれる方は案内します、とスタッフの方が言ってくれて、
何人かの人が付いていったけれど、私はカレー屋で済ませてきたからな、
とそのまま席にいた。
(後で、MCでここのトイレの話が出てきて、
 行っておけば良かった・・・! と悔やんだ)

ここでも誰も声を発さず、重々しい空気。
そろそろ、重苦しさに絶えられなくなってきた。
このままの重苦しい空気のまま、ライブに突入はちょっと・・・。

隣りのソファに、花束の女性がいた。
(花、綺麗ですね、て声をかけてみようかな・・・)
と思ったところで、同卓に座っていたもう一人がトイレから戻ってきた。
(3人席で1人にだけ声をかけるのは、ちょっと気まずいかな・・・どうしよう)
と躊躇しているうちに、花束はスタッフに預けられ、
声をかける機会を失ってしまった。

チキンな自分に落ち込んでいるところで、
会場の準備が整いました、とスタッフに案内されて、上階へ。
席はあらかじめ決められているとのことで、
会場となるスタジオの入口で、呼ばれた順に整列して、中へ。

スタジオの中は、手作りの雰囲気で可愛らしく飾られていて、
席についたところで、隣りの女性(花束の女性だった)が、
「椅子に折り紙が付いてますね」
と教えてくれた。
見ると、折り紙を切り抜いたタコが椅子の脚に貼り付けられていた。
声をかけられて、やっと機会ができたので、
「花束、綺麗でしたね」
と隣りの女性に言えた。そうしたら、すごく嬉しそうに、
「ありがとうございます。すごく悩んだんですけど、
 彼女には、野性的な力強さを感じるような、そういう花束がいいと思って、
 花屋で店員さんに頑張ってそういうイメージを伝えて作ってもらったんです」
と話してくれた。

女性の抱えていた花束は、名前はわからないのだけど、白い大きな花を中心に、
グリーンが雄雄しく添えられているような印象の花束だった。
「あぁ、わかります、そういうイメージですよね!」
花束のイメージもそうだし、それが彼女のイメージだというのも、
すごくよくわかった。
そこまでのことを思い巡らせて、花束を用意してきた女性に、
なんかもう頭の下がる思いだった。

スタジオに入って、いよいよ逃げない現実だと思えたからか、
それとも、スタジオの雰囲気のおかげか、
他の人たちも、声を交わし始めていて、それまでの固かった雰囲気がほどけていた。

そうしたところで、開始時刻となり、
スタジオ入口から、バンドメンバーが一人、二人と入ってきた。
拍手しながら入場を見守っているところで、
「こんにちは」
と颯爽と三人目。

え。
と、一瞬、わからなかった。

次の瞬間、彼女とわかって、
一瞬わからなかったのは、彼女がいつものライブと違って、
ポニーテールだったからだけじゃなくて、
(あぁ、そうか。マイクを通さない肉声を聞くの、初めてだからだ)
と気づいた。

そこからの一時間あまりのことは、
文章にすると、なんだか陳腐になってしまいそうなので
省略するけど、
全部が終わって、会場を後にして一人歩く帰路、
何かに書き留めておかないと、何だか現実のこととして残らないような気がして、
そっとつぶやいた。

f:id:satoko_szk:20191013193451j:plain

翌日、出社して、
このスペシャル感が伝わりやすいのは同年代だろう、と
まっすぐに同年代の同僚の元へ行き、
「全然、仕事と関係ない話なんですけどね、
 私には20年前から好きなアーティストがいましてね…」
と、朝っぱらから何の話をしにきたんだ、と
怪訝な顔をする同僚につらつらと話し始めた。

私の話の主旨が伝わったところで、
「お前、昨日の打ち合わせでは何も言ってなかったのに、
 内心、そのことで頭いっぱいだったのかよ」
とケラケラ笑われた。

だって、
ライブ前は口にしたら消えそうな気がしたんだもん。
それでもって今度は、口にしないと消えそうな気がするんだもん( ̄^ ̄)


というわけで、今もってふわふわした現実感の薄い一夜でしたが、
本当にかけがえのない時間でした。
親切に対応してくださったビクターのスタッフさん、
どうもありがとうございましたm(_ _)m