"好き"と"関心"を巡る冒険 第二章 後編 vol.5

(前回のあらすじ)
センター、ES活動、人事部の仕事を並行して進める中で、
ぶち当たった、会社のお金のしくみの問題を解決するために動く。

前回→"好き"と"関心"を巡る冒険 第二章 後編 vol.4 - Sato’s Diary
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こうして2010年からの私は、
『明るく楽しく』を掲げて活動していたES活動の裏で、
センターの仕事に悪戦苦闘していた。

仕事そのものよりも、それ以前のところで
振り回され続けたセンターではあったけれど、
3年間在籍していたこのセンターの、
明るくて、自由で――私を悩ませるほどに、
本当に自由過ぎるほどに自由な空気が、私は大好きだった。


ある時、私が社内チャットで、ある社員から
ちょっと行き過ぎた内容のメッセージをもらうようになって、
深刻に思い詰めて相談したら、それからは毎日、定時後に、
「今日はどんな内容が来たの~?」
と私の周りにみんなが集まり、その日交わしたチャットの内容を見ながら、
「こんな風に書くと相手を勘違いさせる」
「私ならフェードアウト作戦でいく」
なんて、作戦会議するようになったり。

陸の孤島に閉じ込められて帰れなくなった3.11の夜、
どうせ帰れないなら、と
会議室でワンセグでニュースをつけながら、みんなでモンハンをやっていたら、
自席でずっと仕事をしていた課長のK松さんが
「何か問題あったの!?」
と勢いよく会議室の扉を開けて、でもゲームをしている私たちの姿を見た瞬間に、
「なんだ、モンハンか…」
と言って、ぱたん、と扉を閉めたり。

会社近くの居酒屋で、またまたモンハンをやりながら、
仕事をサボッているメンバーのことをN口さんに愚痴ったら、
それからしばらくして、
「ごめんSatoさん。
 H野さんに言って、俺のチームに彼をもらっちゃったわ~」
と笑いながらN口さんに言われて、
「私のチームが人必要なことわかってるくせに、
 何てことをするんですか!」
って、もちろん私は怒ったけれど、
「いやぁ、Satoさんのところでうまくいってないみたいだから、
 引き取ってあげたんだよ」
なんて、悪びれる風もなく言われると、
私は、「信じられない!」と叫びつつも、人間不信に陥るよりも、
確かにメンバーに舐められてしまっている自分の力量の問題かな、
なんてどこか納得してしまったり。


彼らのことを思い出すと、
本当に、どうにも深刻になれない。

思い詰めていたはずなのに、
不安や心細さを感じていたはずなのに、
悔しさや怒りを感じていたはずなのに、
なぜか最後は笑っているのだ。


誰かが守ってくれるような場所ではなかった。
だけど、私はこの場所で、一度だって孤独になることがなく、
いつでも、どんな時でも、
明るい空気に包まれていたのだ。

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会社を辞める時、たくさんの人達にメールを書いたけれど、
彼らに宛てたメールだけは、どうしても真面目なテイストで書けなかった。


だから、今、
困ったなぁ…と思っている。

ここから、真面目な話を書こうとしているのに、
真面目な話を書こうとしている私の頭の中で、
どこで手に入れたのかわからないヘンテコなオモチャを持って
いきなり突撃してくるM雄さんの姿が浮かんで、
真面目になりきれなくて、困ったなぁ…と思ってる。

だけど、やっぱりきちんと書きたい話だから、
「ちょっと今、真面目な話をしてるんだから、後にしてくださいっ」
あの頃と同じようにそう言って、頭の中のM雄さんを追っ払って、
私は話を進めようと思う。
(しょぼん、と立ち去るM雄さんの姿が目に浮かぶ)


今もまだ細く繋がり続けているあなたたちは、
もしかしたら、この話を読んでくれているかもしれない。

あの頃、あなた達が尋ねてきても、それとなく探ってきても、
曖昧にぼかし続けていた、
なぜ私があなたたちと楽しく過ごしていたあの場所を出たのか、
そしてその一年後に、なぜ、
あれほど自由に駆け巡りまわっていたはずの会社を突然辞めたのか。

その話をこれから綴ろうと思う。


私がぼかし続けたのは、
あなた達のことを信じていなかったわけでも、
頼りにしていなかったからでもない。

あなた達の笑顔が大好きだったからだ。
あなた達に暗いものを残して、
その笑顔を曇らせたくなかったからだ。
あなた達とは最後まで笑顔でいたかったからだ。


だけど、よく考えてみれば、
何でも楽しい空気に変えてしまうあなた達ならば、
きっと、この話だって、笑いに変えてくれただろう。
笑いに変えてもらえば良かったなと、今思う。

だから、あなた達の力を信じて、
はぐらかし続けてきた、あの頃の話をここから綴っていく。

どうか、読み終えたら、あの頃と同じように、
私の真面目な話を、笑いに変えてください。

(つづく)


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