"好き"と"関心"を巡る冒険 第三章 Autumn-1

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社内フリーランスになった私は、
早速、技術部に
「いつでも手伝える状態になったので、
 私の手が必要だったら、いつでも声掛けてくださいね!」
嬉々として、そう声を掛けた。

が。
「いやぁ、技術部に来てくれないなら、上司を介さないといけないから…」
と言って、渋られた。

私はS津さんを通して、技術部のSマネージャーにも、
私の手が必要だったら気軽に言ってくださいね、
と、ちゃんと伝えている。

それでも、いやぁ…という反応だった。


なんだよ! あれだけ人の手が足りないって言ってたくせに!
同じ部署に来てくれないならNo Thanksだなんて、
なんでこんな小さな会社で、そんな部署の壁を作ってやがるんだ!
こっちは部署の壁を超えて君らを助けたくて、社内フリーランスになったのに…!

私は消沈する。


仕方ないので、S津さんがこれどう?と持ってきた、
新規プロダクトを扱う開発部の案件の手伝いやら、
以前から着手していた共通ライブラリの改修やらを進めたりしながら、
社内フリーランスとしての活動を始めた。

 * * *

社内フリーランスとして、
開発部内の案件に、技術担当として手伝いに入ると、またもや、
(あぁ、課題や進捗がまともに管理されていない…)
という状況に直面した。

「技術系に振り切る!」と決断してから
ここに至るまでの私の悩みである。

私の管理系スキルは、
この会社の管理系社員の平均よりも高い。
だから、「このままいくとプロジェクトが危ないぞ」というのが、
他の社員よりも早くから、ありありと見えてしまうのだ。

かといって、ここで管理作業に手を出してしまったら、
「あ、Satoさんって、管理作業もやってくれるんだ?
 じゃあ、あれもこれもそれもお願い」
みたいな展開になって、
技術担当ではなく、管理作業も手伝ってくれる何でも屋として、開発部の各プロジェクトからお呼びが掛かってしまう展開になりかねない。

そんなことになったら、せっかく社内フリーランスになったのが台無しだ。

(私は管理作業はしないのだ…)
そう心に誓い、見て見ぬ振りしてコーディングに集中しようとする。

が。
(このまま行くと、プロジェクトが危ういことになる…)
やっぱり気になって、集中できない。
不安と苛立ちが募っていく。

 * * *

「お前に見えている問題を、見える化して伝えたら?」
悩む私に、1on1でS津さんがそうアドバイスをくれた。

社内フリーランスになった私は、
状況確認などを兼ねて、週1でS津さんと1on1をするようになっていた。


「彼らはお前に見えている問題が見えてないだけだろ?」
S津さんが言った。
プロジェクトのメンバー達は、問題をわかってて放置しているのではなく、そもそも見えていないのだ。

「だったら、たとえば、課題一覧を作って朝会を推進するとか。それくらいなら、お前できない?」
「まぁ、それくらいならば…。でも、そんなことしたら、管理作業もしてくれると期待させちゃいませんか?」
今まで、いつもそのパターンで管理作業に嵌り込んできたのだ。
S津さんの提案に対して、私がそう不安を口にすると、
「やらなきゃいいんだよ。これがあなた達の仕事ですよ、てせっつくだけでいいんだよ」
そうS津さんは言った。


アドバイスを受けた私は、早速、課題一覧を作って、
「ちょっと、朝会で状況確認していきたいんですけど…」
とプロジェクトのメンバー達に声を掛けて、
朝会を開催して、課題一覧を共有した。

私のやることは、朝会の主催と課題の見える化までで、
そこから先は、本来の担当者の仕事だ。

このやり方で、プロジェクトはうまく回り出した。
やがて、課題一覧の更新も、本来の担当者が行ってくれるようになった。

プロジェクトの先行きに関する不安の拭い去られた私は、
落ち着いた心持ちで、コーディングに取り組めるようになった。
そして、プロジェクトのメンバー達とも良好な関係を築きながら、
プロジェクトは大きな問題なくリリースを迎えた。

 * * *

見て見ぬ振りはしない。
だけど、それが自分のやりたいことでないならば、
本来の役割である人に、あなたの仕事ですよ、と見える化して渡す。

技術系に振り切ると決めて以降、扱いに悩んでいた管理系スキルの扱い方を、
こうして私は習得した。


(つづく)

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