"好き"と"関心"を巡る冒険 第二章 中編 vol.7

(前回のあらすじ)
コミュニケーションWGのメンバー集めに苦戦しながらも、
一策を講じて、なんとかハード部署側、ソフトウェア部署側両方の社員を集めて、
第一回WGが始まる。

前回→"好き"と"関心"を巡る冒険 第二章 中編 vol.6 - Sato’s Diary
全話リストはコチラ


2011年1月。
そうこうして始まったコミュニケーションWGのメンバー構成は
以下のようなものだった。

  • ソフトウェア部署側社員
    • O村さん … リーダー格の一般社員。私の1つ上の先輩。
    • O村さんの後輩2名
  • ハード部署側社員
    • K池さん…幹部社員。ハード部署の賑やかし要員。
    • Y口くん…若手一般社員。ES委員会メンバーである上司から送り込まれてきた。
  • ハイブリッド型社員
    • 私…WGリーダー。一般社員。籍はソフトウェア部署、プロジェクトはハード部署。
    • Hさん…一般社員。元ソフトウェア部署。現在はハード部署所属(K池さんの部下)
    • M川さん…ES委員会のコンサル。ファシリテータとしてWGを補佐。


各自、ひと通りの自己紹介を終えて、私とM川さんから、このWGの目的が
『ソフトウェア部署、ハード部署間の社員のコミュニケーションを促進する
 施策の提案』
であることを説明する。

「そんなの、ボウリング大会でもやればいいんじゃねーの?」
O村さんが面倒くさそうに言う。
彼はマイシューズ、マイボールを持っているくらいのボウリング好きだ。

「『ボウリング大会やります!みなさん、来てください!』って言ったら、
 社員はみんな来てくれるかな?」
ファシリテータのM川さんが、すかさず尋ねる。

「まぁ…行かないっすね。めんどくせーなーって。目の前の仕事優先しますよ。
 上司の目だって怖いし」
O村さんが答えると、
「何言ってんだ? 俺は部下に、『お前ら行って、顔売ってこい!』って言うぞ。
 そう言うのが上司の役目だろうが」
ハード部署側の幹部社員のK池さんが言う。

(よしっ、来た!)
私は内心、ガッツポーズする。

K池さんの思いもよらない言葉に、O村さんが、ぽかんとする。

「いや…だって、仕事で忙しいですし…。
 目の前の仕事を放り出して行ったら、上司は怒るでしょ?」
O村さんが言うと、
「会社がボウリング大会やるって言ってるんだ。
 部下がボウリング大会に行けるように仕事を調整するのが、上司の仕事だろうが」
K池さんが言う。

あまりの常識の違いに、O村さんはただただ衝撃を受けていた。

f:id:satoko_szk:20211115195430p:plain


翌週のWG当日。

会議室に行くためにO村さんのいるフロアに私が姿を現すと、
「おぅ。今からWGか」
と言って、O村さんは席から立ち上がり、私と一緒に会議室に向かった。

当たり前にWGに参加してくれるO村さんの様子に、
私は、心の中でVサインした。

こうして、WGでは、
互いの文化・常識の違いを驚きを伴いながら、確認しあっていく時間を持つのだった。

 * * *

「でもK池さん。だいぶわかってきたけど、
 あなた、向こうの部署でもちょっと例外の人でしょ? 幹部社員だし。
 本当に向こうの一般社員も、そんなに全然違うのか怪しいな~」
ある日のWGで、O村さんが言った。

ふむ。なかなか、鋭い指摘だ。

WGには、ハード部署の一般社員のY口くんも参加してくれているが、
大人しいタイプだし、ES委員会メンバーである上司に
「お前、WGに参加しろ」と言われて送り込まれてきた経緯の若手だ。
O村さんが疑うのはもっともだ。

「じゃあ、次回は向こうのリーダー格の一般社員をゲストに招待して
 インタビューしてみることにしましょう」
ということになった。


私はセンター内の自席に戻ると、ちょうど近くを通りかかったMさんに声をかけた。
「WGでハード側の社員からインタビューしたい、てことになったんですが、
 来週WGに参加してもらうことってできますか?」
「僕でいいんですか? もちろん、いいですよー」
あっさりと快諾をもらう。

ハード部署の社員の感覚は、
 声をかけられる→「俺、有名だor認められている」(うれしい)
 →よろこんで参加する
だ。


翌週のWGにて。
O村さんは、Mさんに質問するも、
ことごとく自分の感覚と違う答えが返ってきて、「まじか…」と言葉を失う。

Mさんも
「えー、そっちはそんななんですかぁ?」
という反応だ。


その後、色々話していくうちに、
「これは結局、
 『上次第で下は、どっちにでも染まっていく』ということなのではなかろうか?」
という話になった。

上が全社活動や部署間の交流に肯定的なら、下も肯定的になるし、
上が否定的なら、下も否定的になる。


「お前らの上司って何であんな閉じこもった感じになってんの?
 俺、あれ気持ち悪いんだけど」
K池さんが言う。

よし、じゃあ、今度はソフトウェア部署の幹部社員をゲストに招聘して聞いてみよう。

しかし、ソフトウェア部署のほとんどの幹部社員は、
こういうことに非協力的な上、社外常駐だからどうしようか…。

そう悩んでいると、
「最近、S課長が常駐先から戻ってきて本社で仕事してるよ」
O村さんが言った。
S課長なら気心の知れた元上司だから誘いやすい。

WG終了後、会議室を出ると、ちょうどS課長とすれ違ったので呼び止める。
「今、コミュニケーションWGというのをやっていて、
 今度、ソフトウェア部署の幹部社員の話を聞いてみたいってことになったんですが、
 来週出ていただくことできませんか?」

そう言って、
(体壊すまで頑張って働いた元部下のお願いごとなんだから、
 もちろん聞いてくれますよね?)
という思いを込めて、にっこりと笑う。

私の思いが通じたのか、
「あぁ、いいよ」
S課長は快く引き受けてくれた。

(つづく)

次の話→"好き"と"関心"を巡る冒険 第二章 中編 vol.8 - Sato’s Diary
全話リストはコチラ