"好き"と"関心"を巡る冒険 第二章 中編 vol.6

(前回のあらすじ)
大好きだった先輩が辞めてしまった時の後悔から、
「伝えていくこと」を諦めないことを決意した私は、
ES活動に嘲笑的なソフトウェア部署の社員にも負けずにアプローチしていく。

前回→"好き"と"関心"を巡る冒険 第二章 中編 vol.5 - Sato’s Diary
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2010年12月。
コミュニケーションWGを開始するにあたって、メンバーを集める必要があったが、
そんなわけで、
ES活動に対して、消極的を通り越して、嘲笑的な姿勢のソフトウェアの部署から、
いかにしてメンバーを集めるかが最初の難関だった。

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「まず、明るく楽しい雰囲気で、
 WGメンバ募集の告知を出しましょう」
WG開始にあたっての事前ミーティングで、
WGを補佐してくれるコンサルのM川さんが言った。

「そんなことやっても、誰も手なんか挙げないですよ」
私が言うと、
「いいから、やるの。これをやっておかないと、後から
 『どういう基準でそのメンバーは決められたんですか?』
 って言ってくる人が絶対いるから」
とM川さんは言った。
なるほど。

誰も手を挙げないだろうとは思いつつも、
明るく楽しい雰囲気の文章を私は書いて、全社掲示板に上げる。

まぁもちろん、誰からも反応はない。

ハードの部署からなら、もしかしたらちょっと反応あったりするかな?
と思っていたが、こちらからも反応はなし。

まぁ、そんなのは想定の範囲内だ。


数日後。
全社会があり、その後の懇親会の会場で、たまたま近くにいたハードの部署の人に、
「今度、コミュニケーションWGやるんですけど、興味ありませんか?」
聞いてみた。
「あぁ、そんな告知が出てたね。
 そういえば、K池くんが『誘われたらやる』って言ってたよ」

K池さんというのは、
私がドン引きした会社合併時のキックオフパーティ(前編vol.1)で
締めに「えいえいおー」とやっていたスキンヘッドの人だ。
直接話したことはなかったが、その頃には同期のYちゃんから、
彼がハード部署での賑やかし役なのだということは聞いていた。

(「誘われたらやる」だなんて、見かけのわりに意外と受け身だな)
と思いつつも、誘えばやってくれるというなら、誘おうじゃないか。

会場内をきょろきょろしながら、スキンヘッドの人を探して、見つけて駆け寄る。

「すみません、今度、コミュニケーションWGやるんですが、
 手伝ってもらえませんか?」
聞くと、
「いいよ!」
即答。

よし、ハード部署側の社員ゲット。


あとはソフトウェア部署の社員をどうするか、だ。

WGは、ハード部署の社員とソフトウェア部署の社員を1,2人ずつくらい集めて
ゆるい雰囲気で、それぞれの部署の文化について、
じっくり雑談形式で話すような場にしようと考えていた。

ES委員会のメンバーであるHさんが、
ソフトウェア部署からハード部署に異動した経歴の人で、
「俺、参加するよ」
と言ってくれてはいるので、
最悪、私と彼がソフトウェア部署側の代表ということでもいいけれど、
もう既に壁を突破している人間が集まって話しても、あまり意味はない。


最上階の懇親会会場から、ソフトウェア部署のデスクのあるフロアに降りていった。
全社会があったので、ひさしぶりに常駐先から戻ってきた社員で
フロアは少し賑わっている。

一人ひとり誘ってみるも、まぁ誰からもOKはもらえない。


そのまま日にちだけが経ち、
いい加減にWGの開催日程を決めないといけない頃合いだが、
参加してくれるソフトウェア部署の社員は全く見つからない。

私は、一策を講じる。

ソフトウェア部署の社員の多くは常駐先にいたが、
本社勤務している社員の中に、私とそれなりに仲の良い1つ上の先輩がいた。
もちろん彼も誘ってはみたが、あっさり断られている。

彼の上司は、私と同じくK部長だ。
「俺はESなんていう、社員の口に餌を運んでやるような活動は反対だ」
と面談の時に私に言ってはばからないK部長なので、
普通に考えて、K部長の元で仕事をしている先輩が、
ES活動に参加するなんて怖くてできないだろう。

でも、K部長は基本いつも社外に常駐だ。
バレなきゃ、いいのだ。

私はK部長の予定を確認して、
定例の顧客打合せが入っていて絶対に彼が本社に来ることのないだろう、
水曜日の午前中をWGの開催日時に設定し、
先輩の席から一番近い会議室をWGの開催場所として予約した。


そして第一回WG開催の当日、開始時間10分前。
先輩の席に困り顔で行く。

「今からあそこの部屋でコミュニケーションWGを始めるんですけど、
 どうしてもこちらの部署の社員が集まらなくて、困ってるんです。
 今日だけでいいので、出てもらえませんか?」
「はぁ? そんなの知らねえよ」
「そこをなんとかっ。かわいい後輩の頼みと思って!」
「かわいくねーよっ。知らねーよ」
彼は口は悪いが、押しに弱いことも私は知っている。
ひたすら粘る。

そうして、
「しょうがねーなー、今日だけだぞ。 おい、お前らも来いっ」
ついに根負けした先輩がそう言って、
彼と一緒に働いている後輩2人も連れてきてくれた。

(よしっ、ソフトウェア部署の社員ゲット!)


「いいか、本当に今日だけだぞ?」
そう念を押す先輩に、
「はい、大丈夫です。ありがとうございますっ」
にっこりお礼を言いながら、私の内心は、
もちろん今日だけにするつもりなんて、これっぽっちとない。

大丈夫。
ハード部署の中でも一番インパクトのあるK池さんと、
行き詰まっても、必ずうまくファシリテートしてくれるM川さん。
この布陣で臨むのだ。絶対またWGに出たくなるはず。

異動初日だけで十分に部署間の違いにカルチャーショックを受け、
ES委員会の会議の楽しさを身をもって体験している私は
そう確信しながら、先輩を会議室の中に招き入れた。

(つづく)


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