契約編1 実印

ローン契約にあたって用意する必要のあるものの中に、
『実印』
がありました。


「ローン本申し込みまでに実印の用意、お願いします」
物件購入申込書を記入した夜にAさんに言われて、
実印!?
なんと、そんなものまで必要になるのか。。。( ̄□ ̄;
若干、顔をこわばらせながら、わかりました、とうなずいた。


実印。
その名を聞いたことはあったけど、それがいったいどういうものなのか、
どうすれば入手できるものなのか、さっぱりわからなかった。


そうか、マンションを買ったっていうあの後輩の彼も、実印を持ってるのね。
実印持ってるなんて、なんか大人だぁ・・・。
なんてことを思いながら、会社でその後輩をしげしげと見つめたりした。


とりあえず、ネットでググってみた。


ふむふむ。
実印となるハンコを用意して、役所に行けば良いのね。。。
で、ハンコは・・・う〜ん、、、ピンキリかぁ・・・。


ちゃんとしたハンコっていうと、やっぱり象牙かなぁ、
と思うのだけど、そうすると、やっぱり結構なお値段で。
マンション購入に伴って、これから諸々の出費がかさんでいく時に、
次回いつ使うかわからないハンコにそこまでお金をかけるものか・・・。
いや、でも、やっぱり、なんか大人の証みたいな感じのするものだし、
ここはやっぱり、ちゃんとしたものを購入するべきか・・・。


ぐるぐる考えてみるけれど、どうにも答えが出ず、
SNSで呟いてみた。
『実印って、みんなどれくらいの価格帯のもので作ってるんだろう?
 「特別なものだから高いのにしよう」なのか、
 「滅多に使わないから安いのでいいや」なのか・・・』


すると、知人友人から色々とコメントが。
ちゃんとしたのを買った、という人から、100均で買ったハンコにした、という人まで様々。


結構みんな、普通に実印持ってることに驚き。
そうか、100均のハンコでも通じるのか。
じゃあ、高級な象牙のハンコまで気張らなくても良いのかな。
でもせっかくだから、やっぱり少し特別感のあるものにしたいな。


ネットでハンコ屋を色々見て回る。
オーダーメイドなので、注文から受け取りまで時間を要するとのこと。
本申し込みの日までに、実印を受け取って、実印登録する、という作業をこなすことを考えると、
2週間以内に受け取れるものでないといけない。


そうして見ていくうちに、おぉっと目に留まったのが、
チタン製のハンコ。
チタン。Ti。
その言葉の響きや、硬質の光を放つ姿、そして象牙と比べてお手入れ不要な耐久性に、
ずぼらな機会工学科卒業生のメカ女の心がぐっと掴まれた。
お届けも最大 1週間とのことなので、問題なし(*´▽`*)


これだ!
と、ポチッと注文ボタンを押したところで、
会社の元同期からSNSにコメント。
「実印は名前だけでも良いんだよ〜」
え?そうなの!?
「私、結婚した後で実印作ったけど、姓が変わることもあるので名前だけの実印。
 『結婚したからって名前が変わるのがTHE ENDとは限らない』ていうのが、
 シングルマザーの私の母親の言(笑)」
同じ職場にいる彼女の旦那(※彼女らは同期カップル)に想いを馳せる。
(週末に嫁と息子を置いて黄色のTシャツ着て、某アイドルを追っかけている場合じゃないぞ・・・!)


名前だけでオッケーとの情報に、
慌てて注文内容変更して、名前のみの実印に変更。


ちなみに後日、ローン契約の済んだあとで、
「素敵な実印でしたね。名前だけでしたね」
とAさんが言った。
「はい、友人に、女性はいつ姓が変わるかわからないから、て言われて。
 彼女、結婚してから実印作ったらしいんですけど、名前だけらしいです(笑)」
と言うと、そうですね、とAさんは頷いた。
そして、実はAさんはAさんではないという面白い話をしてくれた。


「実はAっていうのは、何にも関係ない名字なんですよ。
 女性って、結婚したり離婚したりするたびに名字が変わって面倒じゃないですか。
 だから、本名とも何とも関係ないAっていう姓を名乗ってるんです」


その会話の数刻前に、諸々の契約手続きの準備をしているところで、
Aさんから
「実は私、本名は○○というんです」
と言って、別の姓で書かれた宅地建物取引士の証明書を見せられていた。
その時は、旧姓って意味かな?と思ったのだけど、
(普通、そういう時は「Aは旧姓なんです」みたいな言い方をするよなぁ・・・?)
と、若干の違和感を感じていたのだけど、
なるほど、そういうことだったのか。


  * * * * *

ネットで注文した数日後、実印到着。

ずっしり、ひんやりしたチタンの感触が心地よい。
試しに何度かぺたぺたと押してみる。
重みがあるので、押しやすい。


契約当日の午前中、区役所に行って実印登録。
区役所の人に実印を渡すと、
「ずっしりしていて良い印鑑ですね」
と言ってもらえた(* ̄ー ̄)v



結局、実印を使う必要に迫られたのは、今のところ、
ローン契約のときだけなのだけど、
やっぱり、このちょっと特別感のあるハンコの存在はうれしい。


ちなみに実印の必要は全くなかったのだけれど、
この3ヶ月後、退職願いを書いたときには、せっかくなので、と
この実印を使わせてもらいました(笑)


私が実印を押したのは、今のところ、それだけなのだけど。
この間、職場で、ある書類に認印を押す必要があった時、
後輩が実印を押していて、
あぁ、彼もきっと実印買いたてで、押したくてたまらない時期なのかもなぁ、
なんて思ったりした。


(つづく)

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