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高杉さん家のおべんとう

最近、川崎ラ・ゾーナの丸善で、
高杉さん家のおべんとう』がよく平積みになっている。
グッジョブ、丸善p(− −

高杉さん家のおべんとう 1
高杉さん家のおべんとう 1
高杉さん家のおべんとう 2
高杉さん家のおべんとう 2
高杉さん家のおべんとう 3
高杉さん家のおべんとう 3


これは現在、「コミックフラッパー」という雑誌で連載中の漫画で、
現在、3巻まで刊行中。
ちょっと前まで、棚の中に、かろうじて各巻1冊ずつ見つけるのがやっと
だったのが、2巻が出てしばらくした頃から、
ちょくちょく平積みになってる。
この漫画の良さのわかる方が丸善にいらっしゃるんですね。
見る目あるっ。


作者の柳原さんは、
私の唯一好きな漫画家さん。
好きな「漫画」は、いっぱいあるけど、
好きな「漫画家さん」と言える人って、この人だけ。
そのあたりの熱い想いについては、
以前(2010-07-03 - Sato’s Diary)も語りましたが。


んがね。この人の描く漫画、
いかんせん、地味なんですよ。
設定が現代だろうが、
歴史物(和)だろうが、歴史物(洋)だろうが、
近未来だろうが、ファンタジーだろうが、
すべからく、地味っ。


雰囲気や系統的には、
『彼方から』のひかわきょうこさんと近いんじゃないかと
思うんだけど、あちらとの決定的な違いは
おそらくメインの男性のカッコ良さ。


一清さまを浮かべても、幸くんを浮かべても、白鬼丸を浮かべても、
何だろう、この地味〜な感じは。
見た目部分と一部の能力を除けば、
そこらへんに普通にいるだろうな、という人ばかり。
『彼方から』のイザークなんて、絶対、現実世界にはおりません。


少女漫画界においては、
ワーッ(*>o<*)、とか、キャーッ(*>_<*)とかいう
キャラ設定や展開って、かなり重要な要素で、
だからこそ、柳原さんの作品は、
いつもとても丁寧に作り込まれているにもかかわらず、
イマイチ人気出なかったり、
打ち切りの憂き目にあったりしているのではなかろーか、
と思うわけです。


唯一、『とりかえ風花伝』の信貞さまだけは
少女漫画的カッコ良さがあったように思うけど、
いかんせん、登場が遅すぎた。。。(−_−;


柳原さん作品は、登場人物をゆっくりと掘り起こすように
描いていくから、登場した瞬間に、
「おぉぉっ」とか「きゃー」みたいなのって
ないんですよ。
回を重ねて、人となりが何となくわかってきて、
それで気づくと、なんか、あ、いいかも、
みたいな。
普通の人間関係と一緒ですね。
だけど、その、あ、いいかも、が読者に伝わる前に、
連載終了が決まっちゃったり。


はぁ・・・商業誌はねぇ・・・。
良くも悪くも、勢いで描かれている感じの漫画が
多くなってしまうからねぇ・・・(ー。ー;)


まぁ、そんなわけで、
柳原さんが、ひさしぶりに連載を始めて、
そのタイトルが
高杉さん家のおべんとう
と聞いた時には、
「また、そんな地味なものを・・・( ̄O ̄lll)」
と、がくっとしたのを覚えてます。
「大丈夫?ちゃんと続く!?」
そんな心配をしておりました。


が。単行本化されて、読んでみると、
確かにやっぱり地味・・・
でも・・・何か違う。
何か今までと違う。


何ていうか、良い意味で、
計算されている。


これ、どういう話かというと。

博士号(地理学)を取ったけれども、就職浪人の温巳くん(はるみ・通称ハル)の元に、
母親を亡くして身寄りのなくなった従姉妹の久留里ちゃん(中1)がやって来る。
久留里ちゃんの母、つまりハルの叔母は久留里ちゃんが生まれる前から、
ずっと行方不明だったので、ハルと久留里ちゃんは初対面。
他人に対して警戒心の強い久留里ちゃん。
でも、ハルやその他周りの人々と、「お弁当」を介して徐々に打ち解けあっていく。


というハートフルストーリーなんですが。


が。


主人公のハルはですね、
おそらく、数ある柳原作品の中でも、
もっっとも、地味な男だと思います。
博士号を持ってる。でも地理。地理って何よ!?
(地理学専攻の人、すみません・・・)
さらに就職浪人。
眼鏡にリュックにシャツイン。
地味も地味。振り切れるところまで地味に走った感じ。


そこに久留里ちゃんが登場するわけです。
黒髪さらさらロングの美少女、
超ぶっきらぼう、言葉少なし、友達ゼロ、
でも、スーパーのセール大好きな女子中学生。
ハルとは別の方向に、これまた振り切っている少女です。


このハルと久留里ちゃんの組み合わせが、
実に絶妙で。
話は、きんぴらごぼうがどうの、ハンバーグがどうの、
と、超地味なテーマで進むにも関わらず、
不思議と何度も読み返したくなるし、
読み終えると、
心がほんわか暖まって、
さ、私も夕食と明日のお弁当のおかずの準備するかー、
て前向きな気分になる。


「お弁当」「地理学」がうまく絡まりあって、
ハル、久留里ちゃん、その他の人々を繋げて、
そして変化させていって。


3巻で、久留里ちゃんのとある大きな秘密が明らかに
なるのだけど、それすら、
このゆるやかな物語の中に、静かに織り込まれて。


なんか、もうね。この作りこまれた感じ、でもそれを全然感じさせないところ、本当にすごい。
柳原さん、すんごいレベルアップされたな、と
読みながら、感嘆の溜め息が出た。


柳原さんは、『とりかえ風花伝』で無念の打ち切りを味わって、
でも、諦めきれなくて、同人誌という形で、
最後まで描ききって。
その経験を経て、変わったんだろうな、と思う。
自分の描きたいものを、その核の部分を変えずに、
どうしたら商業誌で最後まで描ききれるのか、
それをしっかり考えて、計算して、
この物語を描き始めたのだろうな、と。


千沙姫&一清さまシリーズで、
「想いを殺して大人になるんじゃない
 想いを叶えるために大人になるんだ」

という一清さまの言葉があるのだけど、
柳原さん自身が、それを貫かれているように思う。


そう、だから私は、柳原さんが、
その作品に留まらず、
漫画家として、好きなんだ。


さてさて、とりとめなく長くなってしまいましたが、
そんなわけで、
高杉さん家のおべんとう
オススメです☆