とりかえ風花伝 完結篇 上 (花とゆめCOMICSスペシャル) |
とりかえ風花伝 完結篇 下 (花とゆめCOMICSスペシャル) |
今日、本屋で見つけた瞬間、うわぁって感激しました。
このマンガは、元々、
2004年から雑誌LaLaDXで連載されていました。
が、人気取りが命の雑誌連載。
作者が考えていた話を描き切れないうちに、連載終了に。。。
マンガの連載では往々にしてあることで、
作者の柳原さんも泣く泣く受け入れたのだけれど。
でも。やっぱり一度、自分の中に生まれた物語、登場人物たち。
どうしてもこれをきちっと最後まで描ききらなくては、
次に進めない。
ということで、個人で続きを描いて自費出版されることを
決意されました。
そうして、2005年から08年にかけて同人誌の形で出版されて、
物語は完結。
この経緯については、以前から柳原さんのブログを拝見していて
知っていました。
(柳原さんのブログ⇒無効なURLです)
ただ、期間とびとびでブログを覗いていたため、
機会を逸して同人誌を手に入れることはできなかったんですが。
それが、今日本屋を見ると、白泉社(LaLaDXの出版社)から
発売されているじゃないですか。
これで続きが読める!という嬉しさはもちろんのこと、
柳原さんの諦めきれなかった想いが、
そのために動くことで、こうして見事に結実したのだなぁ・・・、
という、そのことがね、本当に嬉しくて、嬉しくて。
この柳原さんの描く漫画が、
昔から私は大好きでした。
何が好きかっていうと、
登場人物がみんな、迷い悩みながらも、
“自分の心にまっすぐに生きること”
を選んでいくところ。
だからといって、決して、正義は勝つ、
みたいな流れではなくて、
どちらかというと、
自分の心にまっすぐであることを選んだために、
何かを失ってしまうのだけど。
(東野は足を悪くするし、一清さまは国を失うし・・・)
でも、それでも、これで良かったのだと、
自分の心に嘘をついて何か大きなものを得るよりも、
自分の心にまっすぐにあって、
ささやかだけれど大切なものを守っていく。
時に迷い振り返りながらも、そうやって進んでいく。
柳原さんの描く物語は、
とてもほのぼのとして暖かい作風なのだけど、
根底には、いつもそんな空気が流れてる気がします。
そこが、好きなんだなぁ。
そうして、今回、
自分の心にまっすぐにあった柳原さんの行動が、
こうして結実したことが、
やっぱり本当に嬉しかった。
あと、柳原さんのマンガには、
結構、深い台詞がある。
『コントラクト・キラー』
自分の恋人の敵討ちを暗殺者に依頼する女性に対して、
でもその恋人は強欲でひどい人間だったというのに、なぜそこまでするのか、
とヒロインが問いかけて。
それに対して、「でも私にはやさしかったから」と答える女性。
どきりとした。
人のことを評判とかで判断したり、接し方を変えてしまったりするけれど、
でも、一番大切なのは、自分に対してその人がどうであったか、
なんだよなぁ、って。
『ネットワーク・ポプリ』
都市と郊外で対立している近未来。
郊外在住の恒平は、都市から郊外に越してきたメアリが好きで、
でもメアリと他の郊外在住の友人たちは、
なかなか仲良くならない。
どうしてなんだろう?と首をかしげる恒平に、先生は、
「それは、みんなにメアリの辞書がないからだよ」
て答える。
恒平の辞書にはメアリのページがたくさんあるけれど、
他のみんなにはメアリのページがない。
恒平はメアリが思ったことをすぱすぱ言う性格だと知っているから、
何とも思わないメアリの言動も、他の子からすると、
「冷たい」とか「怖い」とか「郊外者を馬鹿にしている」とか
そんな風に取られてしまう。
そしてメアリにも、みんなの辞書がないから、
結局、お互いに誤解し合ってしまう。
だから、辞書のページを増やせばいいのだ、と。
この話を読んだのは、もう10年以上前になるのだけど、
この辞書の話は日々よく頭をよぎる。
誰かに対して先走って勘違いして怒ってしまったりした時とか、
あぁ、私この人に対して、辞書が足りなかったんだなぁ、て。
ていうか、うちの会社、
3年前に合併したのだけど、未だに内部で対立しあっていて、
まさにこのマンガのような状況。
互いに、乗っ取ろうとしてるだの、凝り固まっているだの、何だの言っているけれども、
やっぱ互いの辞書が足りないだけじゃあないのかなぁ、
なんて思うんだよね。
いっそ、このマンガをみんなに配れば、少しは状況改善されないだろーか、
なんて半ば真剣に考えている今日この頃。